ラベルデザイン
ロゴタイプデザイン
パッケージデザイン
広告デザイン
design: KENICHI OTANI
少年時代から憧れていたウイスキーのパッケージデザイン。
その道のプロではないがウイスキーが好きで仕方がない、という少数の方達で立ち上げたプロジェクト。
製造から販売までの一切を実行、監理する、という徹底したクラフトウイスキー。
自他ともに認めるウイスキー好きの私には、クライアントや包材の協力会社の方達との打ち合わせの時も、バックバーに納められた姿を想像してしまって、どこかに、にんまりした気持ちが潜んでしまう。
厚岸蒸溜所による、700mlフルボトル シングルモルトウイスキー
先行して発売された200mlボトルのシングルモルトウイスキーからは、大きさだけではなく、味や風味にも貫禄が感じられる。
私は、ラベル、化粧箱、輸送用のダンボール箱から、キャップシール、コルク栓等パッケージ全体をトータルでデザインさせていただいた。
デザインも、クラフトウイスキーなりではなく、クラシックウイスキーと成り得る、はしゃがず、タイムレスな佇まいを心がけている。
ここで、少しずつ、デザインコンセプトを紹介していこうと思う。 このウイスキーがナイトライフのパートナーとなった時には思い出し、込められた意味から北海道の土地や、作り手さんたちの想いを巡らすキーとなれば幸いだ。
1. ラベルの ” フィンガースタンプ ”
a finger stamp of silver leaves on the label means a dream and endurance of the founders, a gift from all the producers.
厚岸蒸溜所の裏には湿原が広がっている。
蒸溜所の場所が、ここに決まった一つの理由であると聞いている。
そこのピートを少しばかり掘り起こし、その泥炭(ピート)が付いた作り手の手指の跡を私のツバメノートに採取して、銀箔へと落とし込んだ。
手指の跡には、創業者の夢、作り手たちの努力、そして、製造に関わる人たち皆からの贈り物の象徴とした。
厚岸ウイスキー、雨水。
前回の寒露、シングルモルトとの違い 今後の展開を鑑みて、 ブレンデッドのフォームを念頭にデザインした。
空と海
モルトとグレーン
ニッポンと海外
本格的な春を想う時間が多くなるこの季節に 灰桜色と特濃小豆色を合わせた。
厚岸ウイスキーのニューボトル。
本格的な夏を間近に控えたこの時期、二十四節気の芒種がテーマとなっている。
蛍を表してみた。
ウイスキーのクリエィティブ周りで心掛けていることの一つは、日本のナイトライフに相応しい湿り気。カラッと、ポップに、はしゃいだ様子、には近づかないようにしている。
殊更、今回の芒種は同シリーズ初の夜のシーンをデザインしてみた。
あいまいな時間に、はかない望み、頼りない光が、確かに眼前に現れた様子。
カウンターで、テーブルで、デスクで、ウイスキーボトルに蛍を生け獲った気分になってもらえれば嬉しい。
japanese lights in the early summer night
厚岸ウイスキーの新しいボトル、"処暑" が発売中だ。
今回はブレンデッドということで色数を抑えてストレートに、夏の終わりの感情を表してみた。
一連のデザインは、印刷コスト、与えられた時間内での印刷クオリティ、海外への流通、そして季節感を総括して、木版画のような仕上がりを心掛けている。
端正な顔つきになったと思う。
その分、気取りの要らないシンプルな装いが映える。
夏の終わりの田園風景、逢魔時。
late summer scene. my works.
初商品 「厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 1」
背景の黒色は一升ひとます、手書きで丁寧に、愛情を込めて鉛筆で塗り込んでいる。厚岸の地層に眠る泥炭を、鉛筆の炭素系鉱物(グラファイト)の質感や色で見立てた。その黒い背景は北海道の永遠と続く広大な地平線のようにボトルを一周し、正面から見ると果ては見えない。
ボトルを一周するラベルには、枯山水庭園に鎮座する石のように無作為に文字がレイアウトされている。その結果、このラベルの大きな特徴となる、正面がない。
つまり、この時代に反骨するように、全ての情報を捉える写真は撮影できない。ボトルを回しながら情報を確かめることになる。
文字はボトルを回す行為に反応するようにスピード感を持ち、若い醸造所にふさわしく、しかも、はしゃがないデザインの、サンセリフの斜体字を選んだ。文字の大きさ、太さも自然石のようにバラツキをバランスしている。
ラベルの色は、クライアントの社長から、FOUNDATIONS Xまでの大きな流れを構想しながら、毎回お題のように告げられて、それに相応しいラベルの色とキャップシールの色を模索して決定している。
箱のデザインも、ラベルのデザイン同様、毎回デザインを調整している。
毎回、落款のようなデザインを増やしたり、減らしたり、復活させたり(?)。
ボトルも箱も、次々と発売されるシリーズを目にして、手に取るたびに愉しめるよう工夫をしているつもりだ。
バックバーで他のウイスキーに紛れない独特のデザインにして、突飛でもなく、昔からそこに居たかのような落ち着きがあるデザイン。
新しい蒸留所だからといって、流行にはしゃいだデザインにならず、カウンターの前に置かれた時に、大人の男でも恥ずかしくならないデザインが達成されていると思う。
厚岸は、霧が多く、泥炭も豊富、同じく牡蠣の産地であるスコットランドのアイラ島に似て、静かで広大、力強い風景を持つ町である。時に怖ろしいほどのグレーの塊が支配する。
そんなこの地では、既にウイスキーを軸にブランディングが始まっているようだ。日本中から蒸留所を見学、町にてアイラ島のように牡蠣とウイスキーを一緒に食するスタイルを体験に訪れていると聞く。
厚岸ウイスキーは来年、晴れて、海外にも声高に”ウイスキー”を名乗れるようになる。
既に海外でも発売されているが、今後はフルボトルの”ウイスキー”の発売も予定され、ますますブランドが確かになっていくことであろう。
どこまでも併走していきたいものだ。